書肆心水・総合ページへ


記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度
アンリ・ベルクソン[著]

伝説の名講義シリーズ、ついに公刊! 第二編

ベルクソン自身によるベルクソン哲学解説。ベルクソンの時間と心の哲学における中核的概念「記憶」。『物質と記憶』からアップデートされた論点、解像度を上げた概念の姿。

ここのリンク先で本書のなかをご覧いただけます(PDFファイル)


著者 アンリ・ベルクソン
訳者 藤田尚志・平井靖史・天野恵美理・岡嶋隆佑・木山裕登
書名 記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度
原書 Henri Bergson, Histoire des théories de la mémoire. Cours au Collège de France 1903-1904, PUF, 2018.

体裁・価格 A5判並製 416p 定価3960円(本体3600円+税10%)
刊行 2023年10月
ISBN 978-4-910213-43-9 C0010


●目 次

校訂者序 記憶から自由へ アルノー・フランソワ
第1講 分析と直観
第2講 記憶と知覚の差異
第3講 連合説の検討
第4講 脳と再認
第5講 三つの再認
第6講 記憶の諸平面
第7講 夢と覚醒
第8講 心の病について
第9講 注 意
第10講 注意と記憶の能動性
第11講 連合主義心理学の理論的起源
第12講 記憶と脳状態の関係について
第13講 随伴現象説の諸困難
第14講 〔記録が失われている〕
第15講 古代の心理学のある形而上学的基盤
第16講 古代の知覚論・記憶論
第17講 デカルト主義への歩み
第18講 近代形而上学の並行論
第19講 形而上学的並行論の科学への浸透
訳者解説 平井靖史
訳者あとがき 藤田尚志
人名索引

詳細目次をPDFファイルでご覧いただけます

●訳者解説(平井靖史)より

 ベルクソンの時間と心の哲学において、「記憶」が中核的な概念であることは疑いの余地がない。そしてその「記憶」が極めて独自の仕方で練り上げられた概念であること、それを開陳する『物質と記憶』が並外れて難解な書物であること、それらもまた周知の事実である。その「記憶」をめぐって、円熟期のベルクソン当人が、一般大衆向けに、しかし水準を落とすことなく、たっぷりと時間を使って講義をしてくれる。この新資料の発見とその出版がもたらす恩恵は、専門家にとどまらず、ベルクソン哲学に関心を寄せる多くの人々にとって計り知れないものだ。
 『時間観念の歴史』と同じくプロの速記者のおかげで一語一句復刻されたこの講義録は、著者のアイデアをそのモチベーションにまで遡りつつ明瞭かつ雄弁に語り直してくれている。事例は豊富に追加され、文脈はより具体的に示され、概念はより詳細に――哲学者自身の声で――解説される。これまで見通しの悪かった数々の論点に、かつてない光量のスポットライトが当てられ、コアとなる概念の解像度が一気に上がる。深い靄のなか、そこかしこの断片を手探りで確かめるだけだった一帯が、突然晴れ上がりその驚くべき光景を露わにするのである。
 それだけではない。いくつかの論点は『物質と記憶』から明確にアップデートを遂げており、多元的な生成途上にある哲学者の生の姿を垣間見せてくれる。ベルクソンが好む比喩で言うなら、蛹のなかでどんな「振動」が繰り広げられているのかを覗き見させてくれるわけだ。

●訳者紹介

藤田尚志(ふじた・ひさし) 九州産業大学国際文化学部教授。フランス近現代思想。1973年生まれ。著書、『ベルクソン 反時代的哲学』(勁草書房、2022年)、『ベルクソン思想の現在』(共編著、書肆侃侃房、2022年)、Mécanique et mystique. Sur le quatrième chapitre des Deux Sources de la morale et de la religion de Bergson(共編著、Georg Olms Verlag, 2018)。訳書、アンリ・ベルクソン『時間観念の歴史』(共訳、書肆心水、2019年)。

平井靖史(ひらい・やすし) 慶應義塾大学文学部教授。ベルクソン、ライプニッツなど近現代フランス哲学。1971年生まれ。著書、『世界は時間でできている――ベルクソン時間哲学入門』(青土社、2022年)、Bergson's Scientific Metaphysics: Matter and Memory Today(編著、Bloomsbury, 2022)、『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する』(共編著、書肆心水、2016年)。

天野恵美理(あまの・えみり) 高崎経済大学地域政策学部特命助教。ベルクソンを中心とした近現代哲学。1984年生まれ。論文、「持続と再認――ベルクソンにおける第三種の再認について」(『哲学』第74号、日本哲学会、2023年)、「ベルクソン『物質と記憶』における再認の回路」(『アルケー』第31号、関西哲学会、2023年)。

岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ) 新潟大学人文学部准教授。ベルクソンを中心とした現代フランス哲学。1987年生まれ。論文、「初期べルクソンにおける質と量の問題」(『哲学』第71号、日本哲学会、2020年)、「無と持続:メルロ=ポンティによるベルクソン批判を巡って」(荒畑靖宏・吉川孝編『あらわれを哲学する』、晃洋書房、2023年)。

木山裕登(きやま・やすと) 博士(トゥールーズ大学)(哲学)。帝京大学他非常勤講師。ベルクソンを中心としたフランス哲学・思想史。1987年生まれ。論文、「ベルクソン「意識の諸平面」概念の心理学的背景」(『論集』第32号、東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室、2014年)、「ベルクソンにおける運動と現実態」(『フランス哲学・思想研究』第25号、日仏哲学会、2020年)。