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日本銀行・通貨調節・公益性――金本位制から管理通貨制への経験と理論
深井英五[著]

金利政策と公益、通貨量と生産力――近代日銀歴代総裁きっての国際派、深井英五の著作選集

日銀が視野に収めるべき公益とは何か――近代の経験からの示唆。第13代総裁が語る中央銀行通貨調節の基本。金本位制の有無を超越して貨幣経済に共通なるべき道理を探求した思索と実務の記録。実際的で理論的な、ドグマなき日銀経営の経験。

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造本 四六判上製 384p
価格 定価7590円(本体6900円+税10%)
刊行 2024年11月
ISBN 978-4-910213-56-9 C0033

目 次

Ⅰ 導 入

貨幣経済上の認識整理(講演)
経済的国力の実体/通貨を国富と考える習慣/金本位制下における通貨と国富/資金調達の難易/生産力と通貨との関係/資金の予算と物資の予算/消費節約の必要/生産力の拡充/物資輸入の限界/錯覚を生じた事情/貯蓄奨励と金利の問題/我が国金利の変遷/社会問題としての金利政策/通貨に対する信用の維持/結 語

日本銀行の国債引受と財政経済(講演)
普通の国債募集/我が国最近の国債発行方法/日本銀行引受の妙味/警戒を要する諸点/国債消化と通貨の状態/国債消化と金利政策/国債発行と生産力との関係/生産力の弾力性/経済原論の活用

Ⅱ 理 論

金本位制離脱後の通貨政策〔増補〕(抄)
本書初刊後の時勢
本書の狙いどころ/通貨政策の二方面/通貨政策と生産力との関連/物価対策と通貨政策/物価と通貨発行高/保証発行限度の問題/物価騰貴の主因/物価対策の要諦/日本銀行の国債引受/低金利の限界/消費の節約/資金経済と物資経済/通貨政策の分野

第一節 いわゆる金本位心理
第二節 金本位の特徴
第三節 金本位制の下における通貨政策

新訂 通貨調節論(抄)
第一章 考察の目標
第二章 考察の態度
第三章 通貨の意義
第四章 通貨調節の必要
第五章 通貨制度及び思潮の変遷
第六章 通貨調節の趣旨
第七章 通貨の価値と通貨の調節
第八章 通貨の対内価値と対外価値

Ⅲ 経 験

回顧七十年(抄)
大蔵省から日本銀行へ/松方正義公の知遇/高橋是清氏に随伴せる外国勤務/在外資金の処理/事務細片/通貨政策上の心構え/外債政策の行詰り/第一次世界戦争中の金融通貨政策/パリ講和会議/ワシントン会議とジェノヴァ会議/戦後の財界救済/関東大震火災/昭和二年の金融界大動乱/金解禁の失敗/新政策に関する高橋大蔵大臣との交渉/ロンドン国際経済会議/日本銀行総裁として/貴族院から枢密院へ

日本銀行総裁退職の辞(講演)

●著者紹介

深井英五(ふかい・えいご/1871-1945)第13代日本銀行総裁。1891年同志社卒業後、国民新聞社、民友社、大蔵大臣松方正義の秘書官を経て、1901年日本銀行入行。検査局および営業局の調査役、秘書役、外事部主事、国債局長、営業局長等を経て、18年理事、28年副総裁、35年総裁となる。理事就任後は日銀金融政策遂行の中心人物となり金本位制から管理通貨制へと向かう金融政策を運営。高橋是清財政の公債政策(日銀引受による国債発行と消化政策)に協力。パリ講和会議、ワシントン軍備制限会議およびジェノヴァ経済会議に帝国政府全権委員の随員として、ロンドン国際経済会議に帝国政府全権委員の一人として参列。38年日銀退職。その後、貴族院議員、枢密顧問官。著書、『通貨調節論』『通貨問題としての金解禁』『金本位制離脱後の通貨政策』『人物と思想』『回顧七十年』『枢密院重要議事覚書』他。