フロイトの矛盾――フロイト精神分析の精神分析と精神分析の再生
精神分析は創始者のトラウマから誕生したのか
フロイトの行なう理論化には内的なさまざまの矛盾や断裂が生じており、本書が明るみにもたらすその矛盾は、フロイトの思考方法の核心から生じている。精神分析に内在するさまざまな可能性を実りあるものにしたいという思いから提起されたフロイトへの問い。贋金事件で有罪となったフロイトの叔父のトラウマがフロイトの精神分析理論に与えた根本的な影響を分析する。
ここのリンク先で本書のなかをご覧いただけます(PDFファイル)
著者 ニコラス・ランド+マリア・トローク(Nicholas Rand, Maria Torok)
訳者 大西雅一郎
書名 フロイトの矛盾 フロイト精神分析の精神分析と精神分析の再生
原書 Questions à Freud : Du devenir de la psychanalyse
体裁・価格 A5判上製 288p 定価5390円(本体4900円+税10%)
刊行 2016年6月
ISBN 978-4-906917-55-6 C0011
●目 次
序論 フロイトに問いを提起する理由は何か?
第I部 フロイト理論の基礎にある諸矛盾
第1章 夢の解釈――自由連想あるいは普遍的な象徴体系
第2章 心的現実という観念とその罠――「現実」と「ファンタスム」のあいだでの揺らぎ
第II部 イェンゼンの『グラディーヴァ』に応用された精神分析
第1章 前置き――問われる応用精神分析
第2章 イェンゼンの『グラディーヴァ』における喪の病と再生――文学的精神分析の試み
第3章 フロイトとポンペイ、抑圧されたものの回帰あるいは埋葬された死?
第III部 精神分析の伝達
第1章 精神分析の歴史に見られる局所構造のなかのパラドックスと秘密――フロイト―フリース、エミー・フォン・N、秘密会議、シャーンドル・フェレンツィ
第IV部 フロイトの精神分析的理解に向けて
第1章 方法論についての見取図
第2章 資料を通してみたフロイト家の破滅的出来事
第3章 フロイトの自己分析、および彼の伝記に関する研究分野
第4章 フロイトの夢、家族を襲った破滅的出来事の証言者たち
第5章 ジークムント・フロイトの精神分析的理解に向けて
結 論
初 出
訳者あとがき
索 引
●著訳者紹介
ニコラス・ランド(Nicholas Rand) ニコラ・アブラハム(1919-1975)の甥。アメリカのウィスコンシン-マディソン大学でフランス文学の教授を務める。マリア・トロークとの共同の著作である本書を含め、フロイトの精神分析の内部からの刷新作業に従事する。マリア・トロークの未刊論文の編纂(Une vie avec la psychanalyse, Aubier,2002)のほかに、著作としては、Le cryptage et la vie des œuvres(Aubier,1989)などがある。
マリア・トローク(Maria Torok) 1925年生まれ、ハンガリー出身。ニコラ・アブラハムの伴侶として共同で精神分析理論の新境地を開拓する。1954年からは幼稚園の精神療法医として勤務する。パリ精神分析協会(SPP)とは距離を置いたニコラ・アブラハムとの共同研究の所産として、1976年にデリダの序文付きで出版された『狼男の言語標本』(港道隆ほか訳、法政大学出版局、2006年)がある。また二人の精神分析理論を集成した著作に1987年に刊行された『表皮と核』がある(大西雅一郎・山崎冬太監訳、松籟社、2014年)。1990年にニコラス・ランドと結婚、1998年死去。
大西雅一郎(おおにし・まさいちろう) 1955年生まれ。成蹊大学教授。東京大学大学院人文科学研究科仏語仏文学修士課程修了。専攻、フランス現代思想。訳書、ジャック・デリダ『友愛のポリティクス』(共訳、みすず書房、2003年)、ジャック・デリダ『絵葉書(T)』(共訳、水声社、2007年)、ジャン=リュック・ナンシー『脱閉域――キリスト教の脱構築1』(現代企画室、2009年)、フィリップ・ラクー=ラバルト『近代人の模倣』(みすず書房、2003年)、ニコラ・アブラハム、マリア・トローク『表皮と核』(共訳、松籟社、2014年)等。