ベルクソン『物質と記憶』を診断する――時間経験の哲学・意識の科学・美学・倫理学への展開
拡張ベルクソン主義宣言! 第二弾
時代にあまりに先駆けて世に出たがゆえに難解書とされてきた『物質と記憶』を、現代諸科学の知見を通して新たに読解する野心的試み。『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する――現代知覚理論・時間論・心の哲学との接続』の続編。檜垣立哉、兼本浩祐、バリー・デイントンほか。
シリーズ第一巻 ベルクソン『物質と記憶』を解剖する
シリーズ第三巻 ベルクソン『物質と記憶』を再起動する
ここのリンク先で本書のなかをご覧いただけます(PDFファイル)
編者 平井靖史・藤田尚志・安孫子信
著者 檜垣立哉・兼本浩祐・B.デイントン ほか
書名 ベルクソン『物質と記憶』を診断する――時間経験の哲学・意識の科学・美学・倫理学への展開
体裁・価格 A5判並製 384p 定価3850円(本体3500円+税10%)
刊行 2017年10月
ISBN 978-4-906917-73-0 C0010
カバー画像 伴野亜希子
●目 次
序論 平井靖史
第1部 読解の諸問題
潜在性とその虚像――ベルクソン『物質と記憶』における潜在性概念……村山達也
『物質と記憶』と形而上学の直観的再興――純粋理性の第四誤謬推論と第一・第二アンチノミー……カミーユ・リキエ(天野恵美理訳)
《コラム》「永いあいだ客として遇されてきた異邦人」――リキエによるベルクソン的カント主義解釈をめぐって……藤田尚志
記憶の場所の論理――『物質と記憶』における超図式論と憑在論……藤田尚志
過去は何故そのまま保存されるのか――『物質と記憶』の記述の多層性について……檜垣立哉
《コラム》記憶力の二形態……村山達也
第2部 心と時間
ベルクソンにおける在ること・夢見ること・見ること……バリー・デイントン(木山裕登訳)
《コラム》いかにして記憶は感覚を生み出すのか――形相からの質料の「発出」……清水将吾
〈時間的に拡張された心〉における完了相の働き――ベルクソンの汎質論と現象的イメージ……平井靖史
《コラム》心の出現――散逸構造と持続……永野拓也
第3部 科学との接続
『物質と記憶』と深層学習……デイヴィッド・クレプス(齋藤俊太訳)
空間的神経表象から時間的圧縮過程へ……太田宏之
《コラム》直接実在論と神経上の時間圧縮についてのベルクソンの議論――デイントン教授と太田教授へのコメント……マイケル・R・ケリー(山根秀介訳)
記憶力と脳――ベルクソンの誤り……ジャン=リュック・プチ(原健一+田村康貴訳)
ベルクソンの第一の記憶を理解する試み――フロイトの記憶論と知覚失認(精神盲)の自験例を導きの糸として……兼本浩祐
《コラム》エーデルマンとフロイト、そしてベルクソン……三宅岳史
第4部 芸術・道徳への展開
現在の脆さ――ベルクソンと河原温……ユリア・ポドロガ(持地秀紀訳)
《コラム》芸術の現在と時間の隘路……増田靖彦
生への注意――『物質と記憶』における道徳性の進化……マイケル・R・ケリー(山根秀介訳)
後書きにおよび謝辞 安孫子信・藤田尚志
人名索引・事項索引
●編者紹介
平井靖史(ひらい・やすし) 福岡大学人文学部・教授。専門はベルクソンおよびライプニッツを中心とする近現代フランス哲学。1971年生。主な業績に、合田正人との共訳によるベルクソン『意識に直接あたえられたものについての試論』(ちくま学芸文庫、2002年)、藤田尚志・安孫子信との共編著『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する――現代知覚理論・時間論・心の哲学との接続』(書肆心水、2016年)。
藤田尚志(ふじた・ひさし) 九州産業大学国際文化学部・准教授、Ph.D.(哲学)。専門は、哲学・倫理学、フランス近現代思想。1973年生。現在、これまでのベルクソン研究をまとめた『ベルクソン 反時代的哲学』を勁草書房ウェブサイト上にて連載中。安孫子信・合田正人との共編著 Tout ouvert : L'évolution créatrice en tous sens(Olms, 2015)。
安孫子信(あびこ・しん) 法政大学文学部・教授。哲学・フランス思想史。1951年生。主な編著書として、『デカルトをめぐる論戦』(京都大学学術出版会、2013年)、『ベルクソン読本』(法政大学出版局、2006年)、藤田尚志・杉村靖彦と共編著 Considérations inactuelles : Bergson et la philosophie française du XIXe siècle(Olms,2017)。
●著者紹介(掲載順)
村山達也(むらやま・たつや) 東北大学・准教授。近現代フランス哲学・倫理学。"Portrait de famille? ― Bergson et le dernier Wittgenstein", in F.Worms(éd.), Annales bergsoniennes V, PUF, 2012.「明証性と価値判断――デカルトの倫理学をめぐって」(座小田豊編『自然観の変遷と人間の運命』東北大学出版会、2015年)。
カミーユ・リキエ(Camille Riquier) パリ・カトリック学院・准教授。現象学、19-20世紀フランス哲学。1974年生。Archéologie de Bergson(PUF, 2009), Philosophie de Péguy(PUF, 2017).
檜垣立哉(ひがき・たつや) 大阪大学人間科学研究科・教授。現代フランス哲学、日本哲学。1964年生。『日本哲学原論序説』(人文書院、2015年)、訳書にジル・ドゥルーズ『ベルクソンの哲学』(小林卓也共訳、勁草書房、2017年)。
バリー・デイントン(Barry Dainton) リバプール大学・教授。形而上学、心・意識・自己の哲学。1958年生。Phenomenal Self(Oxford University Press, 2008), Time and Space(Routledge, 2nd edition 2010), "Bergson on temporal experience and durée réelle" in Ian Phillips, The Routledge Handbook of Philosophy of Temporal Experience(Routledge, 2017).
清水将吾(しみず・しょうご) 日本大学文理学部人文科学研究所・研究員。空間論、知覚の哲学、哲学対話。1978年生。「モリニュー問題へのカント的応答と形体知覚の現象論」(『精神科学』第55号、日本大学哲学研究室編、2017年)、"The Body as the Zero Point", The Journal of the British Society for Phenomenology, Vol.42, No.3, 2011.
永野拓也(ながの・たくや) 熊本高等専門学校熊本キャンパス共通教育科・教授。フランス哲学(ベルクソン哲学)。1967年生。『ベルクソンにおける知性的認識と実在性』(北樹出版、2011年)、「ベルクソンと特殊相対性理論」(金森修編『合理性の考古学――フランスの科学思想史』東京大学出版会、2012年)。
デイヴィッド・クレプス(David Kreps) サルフォード大学・上級講師。情報システムの哲学。1963年生。Bergson, Complexity and Creative Emergence(Palgrave, 2015), Gramsci and Foucault : A Reassessment(ed.Routledge, 2015), Technology and Intimacy : Choice or Coercion(co-edited with G.Fletcher and M.Griffiths, Springer 2016).
太田宏之(おおた・ひろゆき) 防衛医科大学校医学教育部生理学講座・助教。神経生理学。1976年生。"Reevaluation of McCulloch-Pitts-von Neumann's clock", BioSystems 127,(2014), Hiroyuki Ohta et al., "Adrenergic receptor-mediated modulation of striatal firing patterns", Neuroscience Research 112,(2016).
マイケル・R・ケリー(Michael R.Kelly) サンディエゴ大学助教授。現象学。Phenomenology and the Problem of Time(Palgrave Macmillan, 2016), Bergson and Phenomenology(Palgrave Macmillan, 2010).
ジャン=リュック・プチ(Jean-Luc Petit) ストラスブール大学名誉教授。現象学・フッサール研究・認知科学。1944年生。"Pathological Experience : A Challenge for Transcendental Constitution Theory?" In G.d'Oro and S.Overgaard, eds., The Cambridge Companion to Philosophical Methodology(Cambridge University Press, 2017年), A.Berthoz and J.-L. Petit, dir., Complexité-Simplexité(Collège de France, 2014).
兼本浩祐(かねもと・こうすけ) 愛知医科大学精神科学講座・教授。臨床てんかん学、精神病理学。1957年生。『てんかん学ハンドブック 第3版』(医学書院、2012年)、『心はどこまで脳なのだろうか(神経心理学コレクション)』(医学書院、2011年)、『脳を通って私が生まれるとき』(日本評論社、2016年)。
三宅岳史(みやけ・たけし) 香川大学教育学部・准教授、博士(文学)。哲学、西洋哲学史(フランス近代)、科学史。1972年生。『ベルクソン哲学と科学との対話』(京都大学学術出版会、2012年)、「リーマンと心理学、そして哲学」(『現代思想』臨時増刊号 総特集:リーマン、2016年)。
ユリア・ポドロガ(Ioulia Podoroga) ジュネーブ大学研究員。20世紀フランス哲学(特に時間の問題)、芸術の哲学(特に芸術家論)。1978年生。Penser en durée. Bergson au fil de ses images(L'Age d'Homme, 2014), Kandinsky, Malévitch, Filonov et la philosophie. Les systèmes d'abstraction dans l'avant-garde russe(avec J.-Ph.Jaccard, Editions Cécile Defaut, 2017).
増田靖彦(ますだ・やすひこ) 龍谷大学・教授。哲学、現代思想。1967年生。『21世紀の哲学をひらく』(ミネルヴァ書房、2016年、共編著)、訳書にベルクソン『笑い』(光文社、2016年)など。
●訳者紹介(掲載順)
天野恵美理(あまの・えみり) 大阪大学大学院文学研究科・博士後期課程。ベルクソン哲学。1984年生。「ベルクソン『物質と記憶』における「私の知覚」の形成段階について――二章のヴァリアントとの比較を通じて」(『メタフュシカ』、大阪大学大学院文学研究科哲学講座、第46号、2015 年)、「『物質と記憶』における身体の問題――ヴァリアントとの比較を通じて」(『アルケー』、関西哲学会、第23号、2015年)。
木山裕登(きやま・やすと) 東京大学およびトゥールーズ大学・博士課程。ベルクソン哲学。1987年生。「ベルクソン「意識の諸平面」概念の心理学的背景」(『論集』32、東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室、2013年)「ベルクソンとフイエにおけるオートマティスム問題」(『論集』33、東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室、2014年)。
齋藤俊太(さいとう・しゅんた) 株式会社Preferred Networks・リサーチャー。コンピュータ・ビジョン(計算機視覚)。1986年生。Masaki Saito, Eiichiro Matsumoto, Shunta Saito, "Temporal Generative Adversarial Nets with Singular Value Clipping", International Conference on Computer Vision(ICCV), 2017. Satoshi Tsutsui, Tommi Kerola, Shunta Saito, "Distantly Supervised Road Segmentation", ICCV Workshop(CVRSUAD), 2017.
山根秀介(やまね・しゅうすけ) 舞鶴工業高等専門学校・助教。宗教哲学。1987年生。「ウィリアム・ジェイムズの多元的存在論とベルクソンの持続の存在論」(『宗教哲学研究』第33号、2016年)、「ウィリアム・ジェイムズのプラグマティズムにおける実在とその認識」(『哲學』第68号、2017年)、「ベルクソン『試論』における「持続」の一と多」(『宗教学研究室紀要』第10号、2013年)。
原健一(はら・けんいち) 北海道大学大学院文学研究科・博士後期課程。ベルクソン哲学。「『物質と記憶』第一章における哲学の開始――イマージュ論と純粋知覚論の関係について」(日仏哲学会編『フランス哲学思想研究』第21号、2016年)、「なぜ再認は進展でなければいけないのか――ベルクソン『物質と記憶』第二章における記憶の実在証明」(東北哲学会編『東北哲学会年報』第33号、2017年)。
田村康貴(たむら・こうき) 東北大学大学院文学研究科・博士後期課程。近現代フランス哲学・倫理学。1984年生。
持地秀紀(もちぢ・ひでき) 上智大学大学院哲学研究科・博士後期課程。ベルクソン哲学。1989年生。