書肆心水・総合ページへ

オネイログラフィア――夢、精神分析家、芸術家

ロシア現代芸術と精神分析の出会い

すべてがメディア的になりゆく現在、自分の夢が個人性の最後の砦だ! 精神分析を理論に閉じ込めるのではなく、生の実践とするための、ロシア人精神分析家・美術キュレーター、ソ連アンダーグラウンド芸術の証言者である著者による、夢と視覚芸術を通したフロイトとラカンへのユニークな手引き。

ここのリンク先で本書のなかをご覧いただけます(PDFファイル)

新宮一成氏推薦 《フロイトに還れ、フロイトの夢に。「狼男」の夢に、そして汝自身の夢に! 開けゴマ!で開いた部屋、その中に現実界の死せる文字があり、汝の生存が記されている。生き返りつつあるその文字に向かって震撼し、汝自身を孕め! この本にそう書き残したのは、精神分析の主体であった。》


著者 ヴィクトル・マージン(Viktor Mazin)
訳者 斉藤毅
書名 オネイログラフィア――夢、精神分析家、芸術家
原書 日本語版オリジナル編集
体裁・価格 A5判並製 288p 定価3960円(本体3600円+税10%)
刊行 2017年2月
ISBN 978-4-906917-64-8 C0011

●目 次

インタビュー 「南京虫」の回帰――聞き手:ロディオン・トロフィムチェンコ

●第1部 夢
1 夢とバス――あるいはいかにしてメディアは根をおろすのか
2 転生のオネイログラフィア――精神分析と仏教

●第2部 精神分析家
3 フロイトの亡霊たちと狼男の遺産
4 精神分析は複数形で綴られる――あるいは、精神分析への関心――あるいは、精神分析的ディスクール

●第3部 芸術家
5 フロイトの夢美術館の覚醒
6 ユフィート
7 死の表象における『天空の騎士』


●オネイログラフィアとは

オネイログラフィアとは字義通りには夢記述を意味する。この概念の背後にはフロイトによる次の二つの根本的な考えがある。
(1)心理とは記述機械である。
(2)夢は無意識の理解に到るための王道である。
これら二つの考えを結びつけると、夢記述機械というものに導かれる。これが本書の基本主題となるものである。こうした機械の研究は、今日の文化において原理的な重要性を持つ。マス・メディア文化が、今日ますますグローバルな譫妄状態(オニロイド)という様相を呈しているからである。こうしたメディア的譫妄状態の基本的性格の一つとして、内部/外部の境界の消去ということがある。このような消去がもたらす帰結はきわめて本質的である。内部/外部の境界の不在こそは、文化の精神病(プシコーズ)的性格を示すものだからである。

●著訳者紹介

ヴィクトル・マージン(Viktor Mazin) ロシアの精神分析家・美術キュレーター。1958年生まれ。1970年代よりレニングラード(当時)の非公式芸術家らと交流。その後、ペテルブルグの東ヨーロッパ精神分析学院に学び、ペテルブルグ大学に提出した論文『フロイトとデリダの主体』により博士号取得。現在は東ヨーロッパ精神分析学院で教鞭を取る他、同学院内の「フロイトの夢美術館」を拠点に思想・芸術の両分野で旺盛な活動を行なう。著書に『パラノイア――シュレーバー ― フロイト ― ラカン』(2009)、『映画館のラカン』(2015)他多数。

斉藤毅(さいとう・たけし) 1966年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科、博士課程修了。大妻女子大学他講師。専門はロシア文学・文化。訳書にマンデリシターム『言葉と文化――ポエジーをめぐって』(水声社)他。共著に『他者のトポロジー――人文諸学と他者論の現在』(書肆心水)他。