三木清批評選集 東亜協同体の哲学 世界史的立場と近代東アジア 自滅、中断した、世界史的革新理念――新生への指針 十五年戦争期、最も困難な時期において探究された、東アジア協同体、その可能性の中心。 近代的、すなわち抽象的、自由主義的、個人主義的世界主義と対抗ナショナリズムを止揚し、新しい世界主義への道を拓く哲学とは? 関連論考を網羅した、初の三木清「東亜協同体」テーマ選集。 《東亜協同体の文化は、恰もルネッサンスの時代に中世的世界主義を克服しつつ現われたイタリアの国民的文化が同時に自己のうちに近代的世界的原理を含んでいたように、世界史の新しい段階に於ける世界的原理となるベきものを自己のうちに含むのでなければならぬ。》 |
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著者 三木清
書名 三木清批評選集 東亜協同体の哲学 世界史的立場と近代東アジア
体裁・価格 A5判上製 480p 定価6050円(本体5500円+税10%)
刊行日 2007年2月28日
ISBN 978-4-902854-26-8 C0010
◆著者紹介◆
三木清 (みき・きよし)
1897(明治30)年、兵庫県生まれ。哲学者。第一高等学校卒業、西田幾多郎に師事するため京都帝国大学進学、同大学卒業。1922(大正11)年、ドイツへ留学し、リッケルト、ハイデガーに学ぶ。パリ滞在を経て帰国。1926(大正15)年、『パスカルに於ける人間の研究』を処女出版。第三高等学校講師を経て、1927(昭和2)年、法政大学文学部哲学科主任教授となり上京。以後、岩波書店の企画編集に協力。羽仁五郎と雑誌『新興科学の旗のもとに』を発刊し、マルクス主義の人間学的基礎付けを試みる。1930(昭和5)年、治安維持法違反の嫌疑で検挙され、これにより教職を失い、著述業生活に入る。1938(昭和13)年、近衛文麿のブレーントラストとして結成された昭和研究会に参加。1945(昭和20)年3月検挙、6月に投獄され、9月26日、病のため獄死。主要著作出版物、『三木清全集』(岩波書店)、『哲学入門』(岩波新書)、『構想力の論理』(未完作品)など。
◆本書より◆
協同主義に於ては、一つの民族の協同は単に閉鎖的でなく同時に他民族に対して開かれ、そこに東亜諸民族の協同への道が考えられ、同様に東亜諸民族の協同も単に閉鎖的でなく同時に世界に対して開かれたものと考えられるのである。かくの如きことは、全体と特殊との関係を内在的即超越的と考える論理によって可能である。階級内に於ける個人の独自性を否定する階級的全体主義はその抽象的な合理主義と共に一面的に時間的な見地を力説して空間的な見方を欠くに反し、民族内に於ける個人の独自性を否定する民族的全体主義はその抽象的な非合理主義と共に一面的に空間的な見地を強調して時間的な見方を欠いている。協同主義はそれらの抽象性を共に斥けて、あらゆる歴史的なものは時間的であると共に空間的であり、空間的であると共に時間的であると考える具体的な立場に立つのである。