津田史学の思想――津田左右吉セレクション1
記紀の理性的読解を創始し真に学問的な日本思想史を提唱した津田左右吉の業績のエッセンス
歴史における必然と偶然と自由
戦前の皇国史観の時代には皇国史観を批判し、戦後の唯物史観の時代には唯物史観を批判した津田史学が、二つの狂信的な時代を終えた第三の時代に新たな意味を持つ。 論理と実証を基とし、かつ歴史家の歴史観によって構成されるべき歴史とは何か。
シリーズ他巻
日本文化と外来思想 津田左右吉セレクション2
記紀の構造・思想・記法 津田左右吉セレクション3
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著者 津田左右吉
書名 津田史学の思想――津田左右吉セレクション1
体裁・価格 A5判上製 320p 定価6930円(本体6300円+税10%)
刊行日 2012年7月30日
ISBN 978-4-906917-02-0 C0021
●著者紹介
津田左右吉
(つだ・そうきち)
1873年生、1961年歿。歴史学者。厳密な古典批判により、記紀の神代史が客観的史実でないことを論証し、学問的な日本・東洋の古代史と思想史研究を開拓した。のちにその研究が右翼思想家から告発され、幾つかの著書が発禁となり、次いで出版法違反で起訴された。主著『文学に現はれたる我が国民思想の研究』(岩波文庫全8巻)。
1891年、東京専門学校邦語政治科卒業。1896年、教員免許状取得。中学校教員等を経て、1908年、満鮮歴史地理調査部(白鳥庫吉主任)の研究員となる。1913年、『神代史の新しい研究』刊行。1914年、満鮮歴史地理調査部の閉鎖によりその事業が東京帝国大学に移管、1915年、その嘱託研究員となる(1939年まで)。1916年、『文学に現はれたる我が国民思想の研究』刊行開始。1918年、早稲田大学講師となる(1920年、教授)。1919年、『古事記及び日本書紀の新研究』刊行。1924年、『神代史の研究』刊行。1926年、東洋文庫研究部研究員となる。1927年、『道家の思想と其の開展』刊行。1930年、『日本上代史研究』刊行。1933年、『上代日本の社会及び思想』刊行。1935年、『左伝の思想史的研究』刊行。1938年、『儒教の実践道徳』、『支那思想と日本』刊行。1939年、原理日本社の出版物による津田史学への攻撃が始まり、1940年、早稲田大学教授辞職、著書二冊が発禁となり、出版法違反(皇室の尊厳冒涜)で起訴される。1944年、「時効完成により免訴」の宣告にて起訴事件は解消。1946年、『論語と孔子の思想』刊行。1947年、帝国学士院会員に当選。1949年、『日本の神道』刊行、文化勲章受章。1950年、『儒教の研究』刊行開始。1951年、第一回文化功労者に選ばれる。1953年、『日本文芸の研究』刊行。1957年、『シナ仏教の研究』刊行。1959年、『歴史学と歴史教育』刊行。1961年、朝日賞受賞、『思想・文芸・日本語』刊行。
●目 次
必然・偶然・自由
歴史の学に於ける「人」の回復
史学は科学か
歴史の矛盾性
日本歴史の取扱いかたについて
学問の本質
歴史の考えかた
過去の生活をどう理解するか
わたくしの記紀の研究の主旨
出版法違反裁判上申書(抄)