暴風来――附 普通選挙の精神 億兆一心の普通選挙
日本という名の日本最大の宗教、その真髄を学問的に示す問題の書
今なお私的領域あるいは公の陰の領域に広く根を張る日本的反民主主義思想の強さの秘密とは何か。天皇機関説をめぐる論戦で美濃部達吉に敗北し、日本憲法学史から葬り去られ、闇の存在とされてきた東大憲法学教授上杉愼吉。近年その存在に対する関心高まる上杉が、その思想を分かりやすく語った三書の合冊版。日本は他の国と違うという信念と日本型集団主義の精髄。民主主義の「うまくいかない現実」に対する批判として現れる「日本主義」の核心。
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著者 上杉愼吉
書名 暴風来
附 普通選挙の精神 億兆一心の普通選挙
体裁・価格 A5判上製 320p 定価7370円(本体6700円+税10%)
刊行 2019年1月
ISBN 978-4-906917-87-7 C0031
世界各地で国家主義が回帰する今、国力の低下する「国難」日本で息を吹き返す反個人主義の日本型国家主義(集団主義)理念の原型。個人よりも人のつながりを重んじ国家を第一とするそれは、政体が変り「国体」が死語となっても、日本人論として生き続けている。こうした思想はなぜ根強いのか。「民本」と「民主」を区別することによってポピュリズムに堕す民主主義(主権在民)を批判し、国民のため(民本)の国家倫理の要に一点の私もない天皇を見て国民の統一を保つその論理は、天皇主権説が否定された後も、現代的に形を変えつつ民族的な政治理念を支えるものとして存在し続けている。その思想の合理性/非合理性理解のための最重要文献。
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●著者紹介
上杉愼吉(うえすぎ・しんきち) 1878生、1929歿。憲法学者。福井県生まれ。1903年東京帝国大学法科卒業後すぐに同大学助教授となり、06年から09年までドイツ留学。留学中にイエリネック宅に寄寓。12年教授となり穂積八束の憲法講座を継承。ドイツ留学前は国家法人説、天皇機関説を唱えたが、帰国後は天皇主権説の立場をとり、天皇機関説をめぐって美濃部達吉と激しく論争。第一次世界大戦後は、学内外において複数の思想運動団体の結成や指導に尽力。主な著書、『帝国憲法』(1905)『比較各国憲法論』(1906)『帝国憲法述義』(1914)『国体憲法及憲政』(1916)『議会政党及政府』(1916)『暴風来』(1919)『新稿憲法述義』(1924)『日米衝突の必至と国民の覚悟』(1924)『国家論』(1925)『国体論』(1925)など。