時間観念の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1902-1903年度
伝説の名講義、ついに公刊!
百年の時をこえて、いま我々がその講堂に着席する、恰好のベルクソン入門。哲学のアポリアは「時間」を適切に扱うことによって解決されると考えるベルクソンが、古代以来の哲学史に自己の哲学を位置づける。
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著者 アンリ・ベルクソン
訳者 藤田尚志・平井靖史・岡嶋隆佑・木山裕登
書名 時間観念の歴史 コレージュ・ド・フランス講義 1902-1903年度
原書 Henri Bergson, Histoire de l'idée de temps. Cours au Collège de France 1902 -1903, PUF, 2016.
体裁・価格 A5判並製 448p 定価4950円(本体4500円+税10%)※2023年10月第3刷価格改定
刊行 2019年6月
ISBN 978-4-906917-92-1 C0010
●目 次
校訂者序 カミーユ・リキエ
第1講 相対的な知と絶対的な知
第2講 記号による知
第3講 一般観念の起源
第4講 概念と時間
第5講 ギリシア哲学と精確さ
第6講 プラトンの時間論
第7講 アリストテレス
第8講 アリストテレスの運動論
第9講 場所論から時間論へ
第10講 アリストテレスの時間論
第11講 プロティノス哲学への導入
第12講 プロティノスの意識論
第13講 プロティノスの時間論
第14講 プロティノスの自由論
第15講 近世哲学への移行
第16講 近世の哲学と科学における「無限小」革命
第17講 デカルト的直観
第18講 ライプニッツの時間論
第19講 カントの空間論・時間論
補 遺 講義要約(レオナール・コンスタン)
訳者解説 平井靖史
訳者あとがき 藤田尚志
人名(学派名)索引
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●校訂者序より
それらの〔既刊〕講義録が私たちに明らかにしてくれたものと言えば、最良の場合でも、ベルクソンが〔高校の〕教室で開陳していた、古典的な著述家たちや哲学的諸潮流に関する知識にすぎなかったのである。
本書に収められた講義はその限りではない。一つならずの理由で例外的な地位を有しており、歴史的な次元を有していると言っても過言ではあるまい。というのも、この講義録のおかげではじめて、同時代人たちによって非常にしばしば描写されてきた、コレージュ・ド・フランスにおけるベルクソンの伝説の内実へと分け入ることができるからだ。その伝説とは、「ベルクソンのすぐ前に」「同じ教室で講義をしていた高名な経済学者」ルロワ=ボーリュー氏(Paul Leroy-Beaulieu)を驚かせることに始まり、その後パリの名士たちを講義に惹きつけることになったある教授〔ベルクソン〕の伝説である。ルロワ=ボーリュー氏は「日頃はほとんど空の講堂が、奇跡的に、見たこともない数の群衆で満たされるのを見た。それはソルボンヌの学生たちやサン=シュルピスの僧侶たちであった。彼らは、あの哲学者の講義の席を確保するために、〔前の講義から出席して〕気の毒にも一時間のあいだ(…)善良な氏の相貌を見つめ続けねばならなかったのである。あるいはまた、形而上学に夢中になった社交界の女性たちのために席取りをしに来た哀れな男たちや家僕たちもいた」。今日公刊されるこれらの講義はただ単に、一九三〇年代まで続く「ベルクソンの栄光」のはじまりを画するというばかりではなく、それ以上にその「源泉」である。(…)これらの講義はまた、かつてないほどベルクソンの思考を中心として凝縮されたものであり、その思考の理解に新たに特異な光をもたらす〔第一の特権〕とともに、専門的な研究の輪を越えてより広汎に輝きを放つことで、これまで同様、哲学にあまり縁のない聴衆に届くようになり、哲学そのものに興味を向けさせることはできなくとも、彼の著作に関心をもたせるに至る〔第二の特権〕という二重の特権を有しているのである。
●訳者紹介
藤田尚志(ふじた・ひさし) 九州産業大学国際文化学部・教授。フランス近現代哲学・文学。1973年生。近著に安孫子信・杉村靖彦との共編著 Mécanique et mystique. Sur le quatrième chapitre des Deux Sources de la morale et de la religion de Bergson(Olms, 2018)、岩野卓司編『共にあることの哲学と現実――家族・社会・文学・政治(フランス現代思想が問う〈共同体の危険と希望〉2 実践・状況編)』(共著、書肆心水、2017年)など。
平井靖史(ひらい・やすし) 福岡大学人文学部・教授。ベルクソン・ライプニッツなど近現代フランス哲学。1971年生。ベルクソン『意識に直接与えられたものについての試論』(合田正人との共訳、ちくま学芸文庫、2002年)。『ベルクソン『物質と記憶』を再起動する――拡張ベルクソン主義の諸展望』(藤田尚志・安孫子信との共編著、書肆心水、2018年)。
岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ) 慶應義塾大学文学部他非常勤講師。ベルクソンを中心とした現代フランス哲学。1987年生。「ベルクソン『物質と記憶』におけるイマージュ概念について」(『フランス哲学・思想研究』、第22号、2017年)。カンタン・メイヤスー『亡霊のジレンマ』(熊谷謙介・黒木萬代・神保夏子との共訳、青土社、2018年)。
木山裕登(きやま・やすと) 博士(トゥールーズ大学)(哲学)。東京大学大学院人文社会系研究科特任研究員。哲学・フランス思想史。1987年生。「ベルクソン「意識の諸平面」概念の心理学的背景」(東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室『論集』32、2014年)、「ベルクソンとフイエにおけるオートマティスム問題」(東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室『論集』33、2015年)。
●正誤リスト
第1刷における誤りと訂正(2019年8月の第2刷で訂正)
26ページ左から6行目
【誤】絶対・相対・完了・未完了といった語
【正】絶対・相対・無限・完了・未完了といった語
126ページ左から3行目
【誤】われわれ
【正】私たち
144ページ右から4行目
【誤】イデアの系列を上へと
【正】運動から神へと
157ページ左から1行目
【誤】「ある」
【正】「である」
166ページ右から11行目
【誤】〔つまり第一天球〕
【正】※上記を削除
168ページ左から11行目
【誤】大空(voû te céleste)
【正】天蓋(voûte céleste)
353ページ注113
【誤】フランス語訳したがって
【正】フランス語訳、したがって
363ページ注215文末
【誤】pp. 9-13).)。
【正】pp. 9-13)。
439ページ下段右から12行目
【誤】上記5の作業に関しては
【正】上記(3)(4)の作業に関しては