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文明の交差点の地政学――トルコ革新外交のグランドプラン

池内恵氏推薦――地政学の名著、待望の全訳

池内恵氏推薦の辞 「知る人ぞ知るまぼろしの地政学の名著、待望の全訳が現れた。その存在を広く知られながら、主要欧米語の翻訳がなかった大著、新オスマン主義の世界戦略の書が今《蘇った》。トルコの外相・首相を歴任した文明思想家ダウトオウルが国際政治史のパワーセンター・イスタンブールを主軸に構想する、もう一つの世界帝国がもたらす新しい秩序だ。」

ここのリンク先で本書のなかをご覧いただけます(PDFファイル)


著者 アフメト・ダウトオウル
訳者 中田考監訳 中田考/メフメト・ファーティヒ本田恭介/久間達也訳
書名 文明の交差点の地政学 トルコ革新外交のグランドプラン
原書 Stratejik Derinlik: Türkiye'nin Uluslararası Konumu, Küre Yayınları, 2001, 2011
解説 内藤正典
体裁・価格 A5判並製 512p 定価3960円(本体3600円+税10%)
刊行 2020年11月
ISBN 978-4-910213-09-5 C0031

歴史ある非覇権国が今もつべき主体的戦略の深度――日本との類似性
非欧米目線の新しい国際政治理論、その豊富な内容。ダイナミックで多元的な力の均衡システムへと移行しつつある状況が新たな「地政学」を要請する今、トルコ外交から見えるグローバルな地政学問題の最前線。ポスト冷戦期の現実に即した新しい国際政治戦略により、欧米中心の世界秩序を克服しようとする政治的・実践的試みが、文明の衝突から文明の総合へのリアリズムを示す。

日本語版序文より
 「本書は日本の読者には、トルコの外交政策を理解するだけでなく、日本とトルコの類似点を探る上でも、特に興味を持っていただけると思います。アジアの東と西の対極に位置する両国は、19世紀末に近代化という課題に直面した歴史を共有しているからです。西洋の拡張主義に対する両国の反応は、防衛的な西洋化、つまり西洋をモデルにした制度的・政治的改革による西洋への対抗でした。しかしそれは文明のアイデンティティー問題を引き起こすことにもなりました。
 オスマン帝国が改革の甲斐もなくその統合を維持できなかったため、トルコ共和国は当初から過去との歴史的連続性を断ち切ることを目指す新しい国として建国されることになりました。冷戦時代には、トルコと日本はそれぞれ、中東と東アジアにおける地域的脅威がもたらす安全保障上の課題に対応するために、西側の安全保障システムの確固たるメンバーとなりました。しかしポスト冷戦期になると、日本もトルコも歴史的変容とアイデンティティー、歴史認識といった概念と取り組むことで、新たな外交政策において自国に名誉ある地位を与えようと努めてきました。日本の場合は、大日本帝国の誕生にあたっての苦い経験が近代日本の形成につながりました。
 それゆえ権力、歴史、地理のような概念を扱う本書の議論から、日本の読者諸賢が両国の間の様々な類似点を発見してくれれば幸いです。地理的に距離が離れているにもかかわらず、日本とトルコの外交政策の方針は非常に似ています。その意味でも、本書が歴史的に根付いた両国の相互友好関係の深化に貢献することを筆者は願っています。」

目 次

日本語版序文
前 書
序 文
本書の要約(監訳者)

第一部 概念的、歴史的枠組

第1章 パワーのパラメーターと戦略
第2章 戦略理論の不備とその帰結
第3章 歴史遺産とトルコの国際関係

第二部 理論的枠組――漸進戦略と領域政治

第1章 地政学理論――ポスト冷戦期とトルコ
第2章 近隣内陸圏 バルカン諸国―中東―コーカサス
第3章 近隣海洋圏 黒海―東地中海―ペルシャ湾―カスピ海
第4章 近隣大陸圏 ヨーロッパ―北アフリカ―南アジア―中央アジア―東アジア

第三部 応用領域――戦略目標と地域政策

第1章 トルコの戦略的関係と外交目標
第2章 戦略的変化とバルカン諸国
第3章 中東――政治経済的、戦略的パワーバランスの鍵
第4章 ユーラシアのパワーバランスにおける中央アジア政策
第5章 EU――多次元的かつ多面的な関係の分析

結 語

解説(内藤正典)
監訳者後書

索 引


●著者紹介

Ahmet Davutoğlu(アフメト・ダウトオウル) 1959年トルコ共和国コンヤ県生まれ。ボアズィチ(トルコ)大学政治学博士。国際イスラーム大学(マレーシア)助教、准教授、トルコ軍事アカデミー客員講師、ベイケント大学(トルコ)国際学部教授、学部長、エルドアン内閣外交担当主席首相顧問(2002-2009年)、外務大臣(2009-2014年)、首相(2014-2016年)などを歴任。大統領権限を強化する憲法改正をめぐりエルドアン大統領と対立し、2016年首相を辞任、2019年未来党を設立し議長に就任。2011年には『フォーリン・ポリシー』誌「世界の思想家100人」の一人に選ばれている。主要著書(英語)Alternative Paradigms: The Impact of Islamic and Western Weltanschauungs on Political Theory, University Press of America, 1993. Systemic Earthquake and the Struggle for World Order, Cambridge University Press, 2020.

●監訳者紹介

中田考(なかた・こう)1960年生まれ。1984年東京大学文学部卒業。1986年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1992年カイロ大学大学院文学部哲学科博士課程修了(博士号取得)。1992年在サウディアラビア日本国大使館専門調査員。1995年山口大学教育学部助教授。2003年同志社大学神学部教授。現在イブン・ハルドゥーン大学(トルコ)客員教授。主要著書、『カリフ制再興』(2015年、書肆心水)、『イスラーム法とは何か?』(2015年、作品社)、『イスラームの論理』(2016年、筑摩書房)、『帝国の復興と啓蒙の未来』(2017年、太田出版)、『イスラーム学』(2020年、作品社)ほか多数。訳書、イブン・タイミーヤ著『イブン・タイミーヤ政治論集』(2017年、作品社)ほか。監修、『日亜対訳クルアーン』(2014年、作品社)。