Shoshi Shinsui




私についてこなかった男

モーリス・ブランショの小説作品、最後の初訳出版。数あるブランショの小説作品の中で、言語の謎を探究するブランショの個性がもっとも研ぎ澄まされたかたちをとった、哲学小説。

〈私〉と言葉のあいだで不確定に錯綜する、主体・人称、時、空間。〈私〉と〈私である彼〉とのダイアログ。

ブランショ論者・訳者として確かな歩みを重ねてきた訳者による澄明な翻訳と、“ブランショ・漱石・類似”をめぐる長篇解説「全能にして無力な語り手(たち)」を付した、ブランショ読解をめぐる新たな一歩。

普通のことが普通でなくなる普通の言葉で書かれた世界で、静かな静かな狂気に耳を澄ます。――「私についてこなかった男」とはいったい誰なのか?

   




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著者 モーリス・ブランショ
訳者 谷口博史
書名 私についてこなかった男
原書 CELUI QUI NE M'ACCOMPAGNAIT PAS, Editions GALLIMARD, 1953
体裁・価格 四六判上製 320p 定価3520円(本体3200円+税10%)
刊行日 2005年4月30日
ISBN 4-902854-05-8 C1097


著訳者紹介

訳者による少しニュアンスのある「もうひとつの著者紹介」はこちらの別ページへ 

モーリス・ブランショ (Maurice BLANCHOT, 1907-2003)

1920年代(学生時代)にストラスブールでエマニュエル・レヴィナスと、第二次大戦中のパリでジョルジュ・バタイユと出会う。主な書物に、評論集として『踏みはずし』(1943)『火の領分』(1949)『文学空間』(1955)『来るべき書物』(1959)『終わりなき対話』(1969)『友愛』(1971)。小説としては『謎の男トマ』(1941)『アミナダブ』(1942)『至高者』(1948)の三つの長編と、『死の宣告』(1948)『謎の男トマ(改版)』(1950)『望みのときに』(1951)『私についてこなかった男』(1953)『最後の人』(1957)の中編がある。『期待 忘却』(1962)以後、断片形式が採られ、『彼方への歩み』(1973)『災厄のエクリチュール』(1980)の断章集にまとめられる。

訳者紹介 谷口博史 (たにぐち・ひろし)

1962年長崎県生まれ。一橋大学法学部卒業。東京都立大学人文科学研究科仏文学専攻博士課程中退。現在、中央大学法学部専任講師。訳書、ブランショ『望みのときに』(1998)、ラクー=ラバルト『虚構の音楽』(1996)『経験としての詩』(1997)(以上、未來社)、レヴィナス『われわれのあいだで』(1993)『歴史の不測』(1997)『ベルクソン講義録I、II』(1999、2000)(以上、共訳、法政大学出版局)。