Shoshi Shinsui




言語と文学

言葉で言葉を超えることは可能か? 誰もかなわない、文学=哲学の極点、モーリス・ブランショ、『文学はいかにして可能か』

『O嬢の物語』の実作者と長く噂された文学界の伝説的黒幕ジャン・ポーラン、『タルブの花』。「文学はいかにして可能か」は暗号で書かれた政治的テクストでもあるという、内田樹の的確・大胆な読み。

法=掟と自由、共同体なき共同体、コミュニケーションの不=可能性……、逆説に満ちたブランショ的反抗の核心に、ブランショ初期からの言語についての徹底的な思索が埋め込まれていることを示す、ブランショワールドの始原へのいざない。小社オリジナル作品選。

「言語から逃れよ、そうすれば言語に追いかけられる。言語を追い求めよ、そうすれば言語は逃れ去る、とポーラン氏は語る。」(ブランショ)
「(ブランショの「文学はいかにして可能か」は)『タルブの花』を私以上に理解してくれる評論、まさにこの本を私に啓示してくれる評論だ。」(ポーラン)


   




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著 者 モーリス・ブランショ/ジャン・ポーラン/内田樹/山邑久仁子
訳 者 野村英夫(ポーラン) 山邑久仁子(ブランショ)
書 名 言語と文学
体裁・価格 四六判上製 416p 定価4180円(本体3800円+税10%)
刊行日 2004年12月20日
ISBN 4-902854-02-3 C1098


著訳者紹介

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モーリス・ブランショ (Maurice BLANCHOT, 1907-2003)

ストラスブール大学でE・レヴィナスと出会う。30年代は極右系の新聞雑誌に、精神革命を唱える激越な政治論文を執筆。41年、最初の小説『謎の男トマ』出版。同年文芸時評の連載を開始。占領下の混乱期に、政治論文から文学評論へシフト。作品の絶対性の重視、作者はその背後に姿を消すしかないとする思想から、自身の経歴や写真を公表せず、ほぼ晩年まで徹底した匿名性を貫く。評論集『踏みはずし』(43)『火の境界』(49)『文学空間』(55)、『来るべき書物』(59)等で、文学と言語、死を考察する非妥協的文学理念を構築する一方、60年代初めまでは『至高者』(48)、『期待・忘却』(62)など小説も執筆。後期作においてはJ・デリダと思想的に共振。上記外の主著に、『終わりなき対話』(69)『友愛』(71)『彼方へ一歩も』(73)『災厄のエクリチュール』(80)『明かしえぬ共同体』(83)。

ジャン・ポーラン (Jean PAULHAN, 1884-1968)

1907年、教授としてアフリカに渡り、3年ほどマダガスカルに滞在。パリに戻り、東洋語学校でマダガスカル語を教える。第一次大戦に従軍し負傷。戦後シュルレアリスムの雑誌『文学』に協力。1920年、ガリマール社『NRF』誌秘書に。1936年にはその発行人となり、多くの作家を世に送り出す。第二次大戦中はレジスタンスに参加。独軍占領下、謄写版刷などの雑誌発行により辛うじてフランス文学の独立をまもる。戦後はガリマール社の文学主任として新人の発掘に努める一方、新雑誌の創刊、『新NRF』復刊などに携わる。言語即文学という問題意識をもつ著書に、『タルブの花』(41)『明暗』(58)『詩の鍵』(62)『言霊』(67)があり、『ブラック』(52)などの美術評論も著す。1963年、フランス・アカデミーの会員に立候補し選出される。94年に実作者が名乗り出るまで『O嬢の物語』の実作者として長く噂され、世を去るまで文壇に影響力を持ち続けた、いわゆる文壇の大御所。

内田 樹 (うちだ・たつる)

1950年、東京都に生まれる。東京大学文学部フランス文学科卒業。東京都立大学人文科学研究科博士課程(フランス文学専攻)中退。東京都立大学人文学部助手を経て、現在、神戸女学院大学文学部教授。研究領域は、フランス文学・フランス思想、武道論、映画論。主要著作、『ためらいの倫理学』(2001、冬弓舎、2003、角川書店)『レヴィナスと愛の現象学』(2001、せりか書房)『他者と死者』(2004、海鳥社)ほか。主要翻訳、エマニュエル・レヴィナス著『困難な自由』(1985、国文社)『タルムード四講話』(1987、国文社)ほか。

野村英夫 (のむら・ひでお)

1930年、豊中市に生まれる。1962年から64年にかけてフランス政府給費留学生として渡仏。1965年、早稲田大学講師となる。2001年3月をもって、同大学教授を定年退職し、現在にいたる。

山邑久仁子 (やまむら・くにこ)

神戸市に生まれる。上智大学外国語学部卒業、文学研究科フランス文学専攻博士課程満期修了。現在、上智大学他非常勤講師。






目 次

第 I 部  モーリス・ブランショ

文学はいかにして可能か (初出版/単行本限定出版版/単行本収録版 対照)
言語についての探求 (初出版/単行本収録版 対照)
文学における神秘 (初出版/単行本収録版 対照)
第 II 部  ジャン・ポーラン

タルブの花――文学における恐怖政治(テロリスム)
 
1 恐怖政治の肖像
未開状態の文学/貧困と飢え/言葉が怖い


2 言葉の力という神話
恐怖政治の詳細/読者に作者の裏側がみえる/恐怖政治の欠陥へ


3 修辞学の発見
ある錯覚/恐怖政治、自己を正当化するに至る/完成した恐怖政治/文学の意味を転倒させる装置


第 III 部  読 み
内田樹著  面従腹背のテロリズム――『文学はいかにして可能か』のもう一つの読解可能性
「謎」への誘い/『コンバ』の思想的立場/『コンバ』におけるブランショ/占領時代のブランショ/読解 I /読解 II /読解 III /読解 IV /結語


山邑久仁子著  文学的テロリズムの逢着点――『タルブの花』とモーリス・ブランショ
「反・恐怖政治」の逆説/「コミュニカシオン」の概念/危機的時代の言語/否認と不在――文学言語の「可能性」へ