法と世の事実とのずれ
変わる世の中と安定性を要件とする法の間にある関係の基本構造
法と社会の主要素(道徳・経済・政治)とのダイナミックな関係を問う尾高法哲学の基本的な問題系を平易に示す、尾高法哲学入門。「法における規範と事実のこの矛盾は、人間そのものに内在する矛盾のあらわれであるということができよう。法は人間生活の秩序の原理であり、人間の本性にはそもそも矛盾が内在しているからこそ、法の中に規範性と事実性との矛盾が著しくあらわれて来るのである。」
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著者 尾高朝雄
書名 法と世の事実とのずれ
体裁・価格 A5判上製 256p 定価6930円(本体6300円+税10%)
刊行 2019年11月
ISBN 978-4-906917-97-6 C0032
●尾高朝雄既刊書
天皇制の国民主権とノモス主権論/ノモス主権への法哲学/自由・相対主義・自然法/実定法秩序論/法思想とは何か
目 次
第1章 法と事実の関係
1 法における規範と事実
2 法的に意味のある事実
3 法と事実の闘争
4 法と事実の融合
5 問題の展開
第2章 法と道徳的事実
1 法と道徳共同体
2 道徳共同体に対する法の不干渉主義
3 道徳共同体の崩壊
4 法と道徳的事実との間のずれ
5 法と道徳的事実との間のずれの調整
第3章 法と経済的事実
1 法と経済的慣習
2 法と経済的事実との間のずれ
3 法を裏切る経済的事実
4 法を裏切る経済的事実に対する措置
5 経済的利害の対立とその法的調整
第4章 法と政治的事実
1 政治における不寛容の体系
2 政治における寛容の体系
3 政治に対する寛容性の限界
4 左翼絶対主義の立場
5 移動する合法性の限界
第5章 成文法と慣習法
1 慣習法の成文法改廃力
2 成文法主義と慣習法主義
3 慣習法の理論
4 慣習が法となるための条件
5 慣習法の法段階上の位置
6 慣習法と判例法
7 むすび
●著者紹介
尾高朝雄(おたか・ともお) 1899年生、1956年歿。法哲学者。朝鮮に生まれ東京に育つ。1923年東京帝大法学部卒業後、京都帝大文学部哲学科で学ぶ。京城帝大教授、東京帝大法学部教授(法理学、のち法哲学講座担任)を歴任。欧米留学時代(1928年から1932年)にはウィーンでケルゼンに、フライブルクでフッサールに師事。1956年5月ペニシリン・ショックのため急逝。代表的著書に『国家構造論』(学位論文、1936年)『実定法秩序論』(1942年)『法の窮極に在るもの』(1947年)『法の究極にあるものについての再論』(1949年)『数の政治と理の政治』(1949年)『自由論』(1952年)『国民主権と天皇制』(増補版1954年)がある。また在欧中にオーストリアで刊行したGrundlegung der Lehre vom sozialen Verband〔社会団体論の基礎〕(1932年)はドイツ、オーストリアで高く評価され現在も刊行中(Springer刊)。