Shoshi Shinsui




大川周明著

敗 戦 後  大川周明戦後文集

大川周明、時代錯誤の 《イズム》 を戒める

「私を右翼と呼ぶことは正当でない。私は決して日本主義者ではない。」――アメリカ化への雷同でもなく、共産主義への帰依でもなく、反動的日本主義でもない道を唱えた大川周明。

敗戦後の再建国の思想、三度の刑務所生活と東京裁判のこと、石原莞爾や北一輝との思い出など、戦後の大川周明が雑誌で発表した文章をはじめて書籍化。


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著者 大川周明
書名 敗戦後 大川周明戦後文集
体裁・価格 四六判上製 176p 定価2420円(本体2200円+税10%)
刊行日 2010年9月20日
ISBN 978-4-902854-77-0 C0095


●著者紹介

大川周明 (おおかわ・しゅうめい)

1886年、山形生まれ。東京帝国大学卒(宗教学専攻)。満鉄東亜経済調査局編集課長、拓殖大学教授などを兼任。北一輝、満川亀太郎らと猶存社を、その後、行地社を結成し、国家改造運動を推進。5.15事件で逮捕。東京裁判A級戦犯容疑者となるが精神障害のため不起訴となる。晩年は、国家再出発のためには国家の土台である衣食住を堅固にしなければならないと、農法改善による農村復興のための農村行脚を死に至るまで行なった。1957年歿。

●目 次

・ 天照開闢の道

・ 市ヶ谷の楽天囚人

・ アプレ雑談

・ 日本精神への復帰

・ 二人の法華経行者――石原莞爾将軍と北一輝君

・ 鎌倉仏教は何を教えるか

・ 病中消息

●巻頭収録 「天照開闢の道」 冒頭より

 世間は私を右翼と呼ぶ。時には右翼の巨頭などとも呼ぶ。右翼とは左翼に対しての言葉である。左翼とは何か。それは共産主義者又は社会主義者のことである。共産主義と最も極端に対立するものは何か。それは資本主義である。果して然らば資本主義者又は財閥こそ、まさしく右翼と呼ばるべきではないか。私は年少のころ社会主義に傾倒したことはあるが、未だ曾て資本主義や財閥を謳歌した覚えはない。従って私を右翼と呼ぶことは正当でない。
 私は反共産主義者でもなく反資本主義者でもない。強いて云えば非資本主義者であり、非共産主義者であり、一層適切に云えば非主義者である。私は一切の「主義」なるものを奉じない。凡そ如何なる思想でも、主義としてこれを固執すれば、必ず世に害毒を流すようになる。主義とは人間の生活内容を統一するに適当なる立場のことである。人生は不断に流動して息むことを知らない。従って統一に適する立場も、また時により場合に応じて変らざるを得ない。事ある時は軍国主義、事なき時は平和主義、国貧しければ産業主義、国豊かなれば文化主義総じて個人又は国民がそれぞれの場合に応じて取捨する立場である。然るにそれ等の立場の一つだけを万古不易の真理なるかのように主張して自余一切の立場を排撃することは、頭脳のはたらきが器械的であること、また我執の強いことから起る。それ故に主義の標榜は常に一種の挑戦である。(……以下続く)