この女性が間違った判断をしていることは誰もが分かることですが、いっぽうこれと同じ種類の間違いは、誰もがつい犯しがちなことも事実でしょう。こうしたことがどうしておきるのかが対談型式で考察され、その原理が明かされます。上記の話題は第一印象というもののはたらきを指摘するものですが、ブリアンならブリアンという名詞が、ブリアンについての部分的な印象と一体化してブリアン全体を代表してしまう例と言えるでしょう。本書の第 I 部ではこれが 「全体性の幻想」 と名づけられ、それに関するさまざまな話題が論じられます。
本書第I部の底本は、エリゼ・ルクリュ著『地人論(第1巻・人祖論)』(石川三四郎訳、1930年、春秋社)です。本書にはそのうち序文と三つの章を収録しました。原書(L'Homme et la Terre)初版は1905年から1908年にかけて6分冊4巻構成で刊行されたものです。第II部の底本は、石川三四郎著『エリゼ・ルクリュ――思想と生涯――』(1948年、国民科学社)です。
「我々は、そして万物は、全てが差異的であり、全てが等位にあり、全てが関係的である」――このイスラームの根本的な思想を存在論的・哲学的にきわめてゆく学問分野は「ヒクマ(叡智の学)」と呼ばれてきました。本書は、長い歴史を持つイスラーム哲学の到達点である現代の成果を簡潔に纏めるかたちで、最も核心的な主題を扱ったものです。イスラーム世界では極めて高い評価を得ており、ヒクマを学ぶ入門書と位置づけられています。英訳版は2003年にThe Elements of Islamic Metaphysicsという書名で刊行されました。
日本の4倍半の国土に6,800万人が暮らすイラン(イラン・イスラーム共和国 Islamic Republic of Iran)は多くの日本人の日常生活にとっては縁遠い国と感じられ、むしろペルシアの時代の彼の地のほうに親近感を覚えることもあるでしょう。日本人の中堅世代以上にとっては、79年のホメイニー(イスラーム)革命の国として、若年層の日本人にとっては首都圏の「周辺」に群がる「イラン人」としての印象くらいしかないかもしれません。79年革命当時のニュース映像に表現された最高指導者ホメイニーのイメージは今のビン・ラーディンのそれに類似したものとして目に映ったこともあるでしょうし、稼ぎのために日本にやってきたイラン人と見られる人たちを目にして身構える思いをした方もおられるかもしれません。